–パキスタン、モヘンジョ・ダロ
遂に来てしまった。世界最古という説もある、世界史の教科書で誰もが目にしたことがあるであろう、モヘンジョ・ダロ遺跡群。
石の覆いの付いた排水路、整然とした街並み等の高度な設計をされた都市という以上に、未だ解読されないインダス文字、地球の裏側イースター島のロンゴロンゴ文字との異常な類似性、トリニタイト群の存在、埋葬されずに一箇所からまとめて発見された16体の骨、謎の民族、唐突な原因不明の滅亡、古くから呼ばれてきた「死の丘」という名前───。
アツすぎます。
そして気温も暑すぎます。
多分50℃超えています。
しかも意外と広い。おそらく2km四方はあるんじゃないだろうか。遺跡はいくつかのエリアに別れていて、またそのエリアからエリアまでが遠い。この時期は最も暑い季節らしく、観光客は誰もいない。ただ一人で古代の遺跡に立ち尽くすと、まるで古代の生活の中に入り込んでしまったような気分になれて良いのだけど、昼ごろ2つほどのエリアを見て回っていると、頭がくらくらしてきた。このままでは熱射病になるかもしれない。
いったん出直して夕方に出かけると、やっぱり暑い。最も遠いエリアに至ると、見渡す限り瓦礫と低木の荒野だ。水も少なくなり、そろそろ戻ろうか…と思っていると、遥か向こうの方からダンボールを肩に担いだ男が向かってくるのが見える。地元の農夫だろうか。すれ違おうとしたとき、男が口を開いた。
「Water?」
「えっ?」
なんとダンボールの中には、ミネラルウォーター、コーラ、マンゴージュース等が詰め込まれている。しかも冷えている!幻じゃないかと思った。どうやって冷やしてるんだ?つか、お前どこから来たんだ??
混乱しながら代金を渡すと、男は再びダンボールをかついで焼けた遺跡の陽炎の中を去っていった。僕の手にはコーラの瓶が残った。夢じゃないようだ。それにしても、なんてハードな商売だ…でも、まあ、助かった。
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