–ノルウェー、ホニングスバーグ
ルーカとヴァレンチノに感謝と別れを告げてフェリーに乗り込む。
ノールカップ方面へのバスは一日一本、夕方しか出ない上に直でノールカップには行けず、けっこう手前の街、アルタまでだという。どうしようかとインフォメーションをうろついていると「船でいけばいいじゃない」。
船か。結構な値段がしそうだな、と二の足を踏んでしまうけど、まあもうすぐ帰るんだしケチってても仕方ないかと思い返す。なによりベッドで寝たい…と言うわけで優雅に「ナルヴィク号」という船で(しかもキャビンで)ノールカップを目指すことにした。片道20時間。
チェックインしてシャワーを浴びて泥のように眠り、目が覚めると船はフィヨルドを横目にノルウェー海を突き進んでいるところだった。
ときおり雲の隙間から日が差し込み、強い虹が出たり消えたりしている。その向こうに見える小さな島にいくつもの白い豆粒のような動物が見える。白熊だ。急な崖をゆっくり歩いている様はインドで見た羊みたいだ。
これから冬が来ると、あたり一面真っ白になってしまうんだろう。
それを見ることはなく、僕の旅はじき終わる。
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