–ギリシャ、アモルゴス
スクーターで山の上を走るのはかなりきつい。その理由は半端じゃない風速だ。北の海から吹く風が高い山で巨大な雲を生み出しながら南の海に吹き降ろす。場所によってはスクーターごと吹っ飛ばされてしまいそうな勢いだ。なにせそのようなポイントでは、一日中雲が生まれている。日没後は寒くて凍えそうだ。Tシャツでこの標高差はキツイな…
島の西端のビーチを目指して走っていると、小さな湾と奇妙に傾いた船が停泊しているのが視界の隅に入った。あんな辺鄙な湾に──いや、あれは廃船か──興味を惹かれて道なき道を1キロほど歩くと、まさしく廃船があった。かすかに「OLYMPIA」という名前が見て取れた。
船の横腹には朽ちて大きな穴が開いており、波が寄せるたびに水が噴き出しているように見える。船の内側は既にボロボロの空洞になっているようだ。
このままここで跡形も無くなるまで在り続けるんだろう。この船に乗っていたのはどんな人々だったんだろうか…
著者について