カテゴリーアーカイブ 旅のこと

英雄サラディン

–シリア、ダマスカス

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 シリア首都ダマスカス。別名シャム。市街を覆うようにそびえるカシオン山は、それ自体の裾野もびっしりと建物に覆われている。
 このカシオン山は世界初の殺人現場だという。犯人はカインで被害者はアベル。アダムとイブの息子たち。
 ダマスカスにはアイユーブ朝スルタンの王、英雄サラディンの墓もある。十字軍と熾烈な戦いを行ったサラディンは捕虜を全員殺さなかったという寛大な君主だったという。最古のモスクといわれるウマイヤド・モスクに隣接して建っているサラディン廟には、今も多くの人たちが訪れていた。
 写真はウマイヤド・モスク内部。モザイク画が美しい。

国外退避

–レバノン、ベイルート
 宿に日本大使館から電話が入ってきた。入国のビザ申請時に滞在先として書き込んでいたからだろう。
 「退避勧告は出していませんが、レバノンから出国することをおすすめします」
 同行者と話し合った結果、シリアに戻ろうということに。予定ではベイルートからシリアのダマスカスへ抜けるルートを取ろうとしていたけど、現在レバノン南部の道を通るのはやめたほうがいいだろう、ということで、もと来た道を引き返し北の国境から出てぐるっと迂回するかたちでダマスカスを目指す。
 バスターミナルはやはり避難しようとする人で一杯だったが、なんとか一台のバスにもぐりこむことに成功。車窓からベイルートを振り返ると、さっきまでTVで見ていたのと同じ大きな黒煙が見えた。

レバノン杉と戦闘開始

–レバノン、ベイルート

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 昔のメルセデスがごろごろ街中を走る国、レバノンにやって来た。
 ベイルートの北、トリポリという町でも未だに内戦の跡を目にすることができ、弾痕だらけの廃墟ビルなんかが市街中心部にも残っていたりする。
 ベイルートは地中海を臨む大都市で、久しぶりに高層ビル群に出会った。美しい街だ。
 レバノンの国旗には上下に赤いライン、真ん中には一本の木があしらわれている。これがレバノン杉と呼ばれる杉(見た目はどちらかというと松)で、現在はレバノン等のごく一部にしか残っておらず、保護されている種とのことだ。レバノン杉を見に行って、ベイルートに戻り海辺で夕食をとる。ここがこの旅行で初の海岸なんだ、僕はようやく地中海までたどり着いたんだと思うと感慨深い。地中海に沈む夕日も、ベイルートの夜景もとてもとても綺麗だった。

 この日、ベイルート空港がイスラエルに空爆された。

砂塵舞う遺跡

–シリア、パルミラ

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 “悲運の女王”ゼノビアが治めた地、パルミラ。かつての栄光は見る影もなく、砂漠に列柱などわずかな遺物が残るだけとなっている。ローマから数々の国を解放し、その国々から快く受け入れられたと言われる女王ゼノビアはとてもドラマチックな生涯であったらしい。
 パルミラとはラテン語における「椰子の町」を意味する国名で、椰子生い茂る豊かなオアシスであり、シルクロードの終わりの休息地として繁栄したとのこと。
 今はもう当時の繁栄を想像する事も難しいほど破壊され、風化してしまっている。
 とりあえず僕がしたことは、コスプレ。

アレッポ石鹸の威力

–シリア、アレッポ

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 アレッポ。例のごとく正直予備知識ゼロ。
 いや、ひとつだけあった。トルコのドゥバヤズットで出会ったけんぷーさんが言っていたではないか。
 「アレッポ石鹸が激安で買える!!」
 で、アレッポ石鹸。よく知らないが最近では日本でもよく知られているらしい代物らしい。
 曰く、「オリーブオイルと月桂樹オイルと苛性ソーダを原料に造った石鹸」「主原料であるオリーブオイルは、人の脂肪酸とよく似た組成を持つオレイン酸を多く含み、汚れを落としつつも脂肪酸を補うことができるため、肌に滑らかな潤いを残す」「肌、頭皮、髪の毛に対して、強壮、消毒、消臭、フケとりなどの効果がある」だそうで。
 こりゃあ試さなければ、と早速購入。体を洗ってみる…洗い流すと明らかに黒く濁ったすすぎ水が!すごい洗浄力!…と思ったが、そういえば最近風呂入ってなかったからかもしれない。早計は禁物だ。
 タオルの洗濯に使ってみた。…やはりすごい洗浄力!薄汚れていたタオルが一気に回復した!これは確かにすごい。でも、月桂樹だかなんだか知らんが、あまり良い匂いではないな。
 という訳でアレッポ石鹸をあと2つばかり買ってみましたので、欲しい人は言ってください。先着2名様に差し上げます。
 写真はアレッポ城。

ガソリンスタンド野宿

–シリア、アレッポ

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 トルコのアンタクヤを通過してシリア国境へ。
 シリア入国にて恐ろしく手間がかかる。僕たちがビザを持っていなかったからだけど、国境でなんとか発行してもらうことはできた。しかし、国境に着いたのが正午で、ビザが降りたのは夜11時。もう外は真っ暗闇もいいとこだ。タクシーも恐ろしい額をふっかけて来る。仕方ない、朝まで待つか…と思っていたところで、ヒッチハイクすることに成功。ただし、アレッポまでは行けないから途中で別の車を拾ってくれとのこと。
 降ろされた場所はアレッポまで40㎞程の場所。眠いけど車を拾わなければならない、と思っていると、目の前のガソリンスタンドからなにやら人影が現れた。「こっちへ来い!」
 男はどうやらガソリンスタンドの管理者のようで、僕たちがアレッポへ行きたいのだ、と伝えると
 「よし、今日はここで寝るといい。明日の朝バスが来る」
 と言って寝床を準備し始めた。外に。
 結局ガソリンスタンドに彼も含めてみんな川の字になって寝る。ガソリンスタンドで野宿とは…貴重な経験をしている気がする。
 明け方、東の空がすごい色を発していた。空には雲ひとつない。トルコからシリアに来たんだ、とようやく実感してきた。
 

UFO博物館

–トルコ、ギョレメ

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 ギョレメ屋外博物館へと向かう一本の道。
 その先、ギョレメ屋外博物館のすぐ手前にひとつの建物が存在する。ぽつりと立てられた看板にはこう書いてある。
 「International UFO Museum」
 直訳すると国際UFO博物館だ。正直、「国際」は言いすぎではないかと思う。
 好奇心と「ネタになるかも」比率2:8くらいの勢いで尋ねてみたところ、物静かなお兄さんがたった一人で公開していた。「トルコの矢追純一」と命名。
 博物館内部は多くが新聞、雑誌の切り抜きで、トルコ語だからさっぱりわからない。他にはUFO、ミステリーサークル、キャトルミューティレーションなんかの写真。
 特筆すべき点は、等身大の宇宙人の人形があることだ。しかしどうやら手作りらしく、ディティールは正直ショボイ。等身大というところにお兄さんの執念を感じる。それにしても、宇宙人が人間を手術台に乗せて何かしてるようなジオラマ(等身大)があるのだけど、人間は普通のマネキンだった。このチープさが絶妙でたまらない。また、等身大の宇宙人がひっそりと壁の隙間から覗いていたりと、突っ込みどころ満載だ。
 ひととおり見て回ると、お兄さんがお茶をご馳走してくれた。どうやらヒマらしい。「お客はよく来るの?」と聞くと「いや、来ない。おかげで貧乏だよ」と言っていた。まあそうだろうな…
 聞くところによると、トルコ、とりわけカッパドキア地方はUFO目撃例が多いそうだ。お兄さんも何度も見たことがあると言う。僕はUFOを見たことがないので、そんなに多いなら今飛んできたりしないかな、とお茶を啜っていたけど、生憎青空には何も飛んでこなかった。

キャラバンサライ

–トルコ、アクサライ

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 キャラバンサライとは隊商宿のこと。
 ここスルタン・ハンのキャラバンサライは13世紀ごろ、セルジューク朝時代のもので、内部にはハマム、宿泊所、取引所、食堂や馬屋などが置かれた。
 今は廃墟になった建物のみが残るだけだけど、当時は行き交う商人たちで賑わっていたのだろう。遥かシルクロードを目指して…

僕の愛車を紹介します

–トルコ、ウチヒサル

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 名前はフェラーリです。
 とりあえず乗るために脚立が必要なのが玉に瑕ですが、なかなかかわいい奴です。ちょっと上下動が激しめなので、乗り物酔いしやすい人や尻の肉が薄い人は辛いかもしれません。燃費は恐ろしく良いのですが、時折オーナーの意思に関係なく枯れ草をむさぼり始めるのが玉に瑕。なんか玉に瑕ばっかりだ。
 50メートルくらい歩いただけで5リラもしました。さすがフェラーリの名に恥じない値だ!

地下都市

–トルコ、デリンクユ、カイマクル

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 デリンクユとカイマクルの地下都市へ。僕のトルコにおけるハイライトはここだ。
 怪しさ300%、いったい誰が何を好きこのんで地面の下に呆れるほど大規模にかくのごとく都市を築いたのか。生活していたのか。なにしろ地下150m~700mの深度だという。中は迷路のような、というか間違いなく迷路だ。なにしろ巨石の隔壁、落とし穴やダミーの通路なんかが至る所にある。ここに住んだ人々は何に脅えていたのだろう?そしてあらゆる痕跡を消し去り何処へ消えたのか。
 地下都市はカッパドキアを象徴するキノコ岩や洞窟住居のように、渓谷内にその入り口があるものだと思っていたけど、全く違っていた。ではどこにあるのかというと、奇岩群からはかなり離れた、まっ平な野原の真ん中にある。「え?ここ?」という感じだ。カイマクルの方はそれでも小規模の岩の丘に入り口があるが、デリンクユは全く何もない。平地に突然下への階段があるような具合だ。
 デリンクユは地下8階層まで、カイマクルは5階層まで公開されていて、2つの地下都市は地下で繋がっている。その長さはなんと9㎞。途方もなさ過ぎて驚くばかりだ。この2つの他にも地下都市はいくつか存在し、多くが地下何階まで存在するのか未だ不明。
 通気口の竪穴を覗き込んでみる。暗闇が遥かに続いているだけだ。石を投げ込んでみたが、音は聞こえなかった。
 地下8階層まで来ると非常に冷えてきて、Tシャツでは辛くなってくる。もっと深いところはさらに寒いだろう。どうやって暖をとっていたのだろう?
 こういうものを見ると、まだまだ明らかになっていないものが地球にはいくつも残っているんだな、という気になる。いつか謎が明かされる日が来るのだろうか。解明されてほしいけど、謎のままで残っていてほしいという気持ちもある。だってそのほうがきっと面白い。