–タイ、チェンマイ
アユタヤから一緒のバスで来て、チェンマイでも一緒に過ごしてくれたスミヤ君。彼は毎年この時期、チェンマイにタイマッサージの勉強に来ている。彼の行きつけのバーで知り合ったという、トゥクトゥクドライバーのボーイと、その彼女であるノンさんと4人でチェンマイの北60kmにある、ボーイの実家へ行くことになった。
街を出るとトゥクトゥクは一台も走ってなくて、珍しそうな視線を感じる。昨日で終わったはずのソンクラーンも郊外ではまだ続いているらしく、そこへ珍しいトゥクトゥクが来るとなると、皆こぞって水をぶっ掛けてくれる。おまけにボーイもわざわざ速度を緩めるし…着くまでに再び僕らはずぶぬれになった。
ボーイの地元では皆彼のことを知っていて、通りかかると声をかけてくれる。ボーイ、まるでヒーローみたいじゃないか。実家に立ち寄ったあと、近くの山中にある滝へ。約50メートルの滝はとても綺麗で、そんな景色を見ながらビールを飲む。言葉にならないくらい美味い。
チェンマイに戻っていったん別れた後、ゲストハウスのダイスケさんも交え、再びボーイたちと合流して飲みに行くことに。
タイの飲み屋(ディスコもかな)は基本的に生演奏で、一曲ごとにボーカルが変わることが多いようだ。客も恐ろしくノリがいい。あちこちで立って踊りながら、曲が始まると大喝采。楽しすぎる。スミヤ君はしきりにアイコンタクトを送ってきていた隣の席の女の子と、いつのまにか一緒に踊っている。やるなあ。ノンさんはなんだか難しい顔をしている。
僕が明日チェンコーンへ向けて出発することを話すと、ボーイもノンさんもとても残念がってくれた。先のスミヤ君と踊っていた女の子のことも含めて、「タイには良い人も悪い人もいる。さっきの子は良くない子だよ。私たちは、スミヤやジュン達が好きだから、とても心配に思う。本当に気をつけて」と涙してくれた。僕はスミヤ君や、彼らに出会えたことを心から嬉しく思うと同時に、友達になれたことを誇りに思う。
タイのヒットナンバーを最後に、閉店時間がやってきた。
ボーイに曲名を教えてもらう。明日、CDショップで探してみよう。
翌日、チェンコーン行きのバスに乗り込む。ボーイたちが見送りに来るよと言ってくれたけど、トゥクトゥクのお客が多いのか結局会えずじまいだった。
バスに揺られながら、チェンマイに本当に来てよかった、と、ひどく感傷的な気分になった。あまりにも日々が楽しかったので、これから一人で旅行を続けられるか不安になったのだ。
スミヤ君、ボーイ、ノンさん、ゲストハウスで出会ったダイチ君やケンジ君やダイスケさん、ミズエさんとモリスさんのインターナショナルカップル、カンボジアに学校をつくったというクリスティン、いつも笑顔で話しかけてくれたネットカフェの女の子。愛すべき人たち、中には二度と会わない人もいるだろう。胸が締め付けられる。一期一会と言う言葉が心に重く響く。日本を出発して、初めて辛いと思った。
北方のバラと呼ばれるチェンマイ、いつの日か再び来て、ドイステープから夜景を眺めたい。