カテゴリーアーカイブ ユーラシア(2006)

3時間デンマーク

–デンマーク、コペンハーゲン

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 ハンブルク駅から列車でコペンハーゲンへ向かう。立ち並ぶ発電用の巨大な風車の林を越えて、海が見えてきた。北欧に入るのだ。窓から見下ろすバルト海は、外気温にふさわしい暗く鈍い色をしている。
 岬の突端で列車が止まった──と思ったら、車両ごとそのままフェリーの中に乗り込んでしまった。話には聞いていたけど、本当に列車ごと船に乗ってしまった。おもしろい。対岸に着くまでは乗客は列車から降り、フェリーのラウンジでくつろげる。そして再び列車に乗り込み、線路に戻った列車はコペンハーゲンへ向かう。
 コペンハーゲン駅に着いてとりあえず両替をする。ユーロ通貨圏は出てしまったので、久しぶりの両替だ。デンマークの通過はデンマーク・クローナ。硬貨のハートマークがかわいらしい。
 駅構内にあったキャンプ用品店でようやく寝袋を購入。これでキャンプの最低限の装備は整ったといえよう。
 デンマークでの観光よりもオーロラ追跡のほうに時間を費やすために、その日のうちに長い橋を渡って海の対岸、スウェーデンのマルメという町へ。結局コペンハーゲンには3時間、しかも駅舎から出ないままの滞在だった。

1泊2日ドイツ

–ドイツ、ハンブルク

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 前日駅舎で野宿だったため、ここハンブルクではちゃんと早めの時間に到着し、ツーリストインフォでホステルを紹介してもらい、電話でしっかり予約して宿を確保した。というかそれが普通なのか…思えばこれまでのヨーロッパ各地で「なぜ日本人は予約せずに来るんだ?」と言われてきたのだった。なんだ皆そうなんじゃないか。いやいや、是正しなければ。アジア気分ではやはりうまくいかない。
 夕飯の食材を買いにスーパーに行くと、やけに取扱商品の幅が広く、食料品のみならず衣料品や日用品なんかもたくさん置いてあって助かる。片隅にはなんとテントまで売ってあった。ためしに幾らか聞いてみると、なんと13ユーロ。え!?安い!!今後の北欧の物価などを鑑みるに、これはもう買いであろう、ということでテントとマットレス代わりのシートを購入する。あとは寝袋を手に入れさえすれば、もう駅のベンチで寝なくてもすむじゃないか。近いうちに買おう。

エッシャー・イン・ザ・パレス

–オランダ、デンハーグ

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 デンハーグはお祭りなのか、骨董市がズラーっと並んでいる。思わず止まる足。
 目的地であるエッシャー美術館はこの公園に面するように建つ。
 エッシャーといえばだまし絵、というイメージだけど、それはものすごく緻密なデッサンや正確なパース、図柄の配置を決める細かな計算、それを踏まえた上でのエッシャーの遊び心による副産物にすぎないのだろう。画家よりも研究者というほうが相応しいかもしれない。
 コンピューターの得意とするような複雑な幾何学模様を、そんなもの全くない時代に描き出した人物。
 ここエッシャー美術館はその作品以外にも、その世界を「体験」できるようなアトラクションがいくつもあってとても面白い。中でもヘルメットのようなディスプレイをかぶって360℃エッシャーの世界に入り込めるアトラクションは凄かった。
 …しかしちょっと酔った。

和蘭映光

–オランダ、アムステルダム

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 アムステルダム。
 この地名の醸し出すなんともいえない混沌具合とは裏腹に、地図の上では整然とした運河が街を区分けしている。しかしそれなら歩きやすいかというとそうでもなく、個人的には今までで一番迷った街だった。
 理由としては、整然としてはいるが同心円状の運河に沿って歩くと方向感覚がすぐに狂うことに加えて、密集して立ち並ぶ建物の階数は平均して高く、ランドマーク的な建物が見えない。そして小路が多すぎることも原因の一つだと思う。
 僕の目指すユースホステルは最寄のバス停までしか分かっておらず、そこからは通りの名前を頼りに探すしかないが、小さい通りのようで地図にない。道行く人に尋ねるも、向こうだと言われたりこっちだと言われたり。ようやく発見したときには日はほとんど暮れていた。
 次第に光を失う空に代わって、街灯りを映した運河が次第に輝き始める。街を彩る。

ブーメラン

–ベルギー、アントワープ

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アントワープにあるブーメランという宿は、ベルギー人のお兄さんと日本人のお姉さんのカップル経営のユースホステル。料金も安く、日本人旅行者には結構有名な宿のようだ。久しぶりに何人かの日本人パッカーに出会えて、最近情報ノートにもお目にかからないし、ガイドブックなしの僕にとっては貴重な情報を多く得ることができた。
街をうろついて宿に戻り、リビングを覗くとたいてい座っているのは、ここに来て予期せず沈没に陥ってしまったというダイチ君だ。中央アジアを通って北欧を抜けて来たとのことで、北欧情報をいろいろ教えてもらう。
「北欧の人はすごく優しいよ!」
彼は北欧での移動は全てヒッチハイク、夜はテントと寝袋で過ごしてきたらしい。それが5月頃だというから驚く。まだまだ寒かっただろうに!まあそれくらい倹約する必要があるほど、物価が高いということは窺い知れた。これは僕もせめて寝袋くらいは買わなければまずいかもしれない。
自転車でアルプス越えをしてきたという強者コンビ、セージ君とハナちゃんの話も面白く、丁度ハナちゃんの誕生日ということでお祝い。久しぶりに日本のカレーを食べた。う…旨すぎる…!!日本のカレー最高。
こんな賑やかでアットホームな宿はこの先無さそうだな…。
後ろ髪惹かれつつオランダへと向かう。

BOOMERANG Y.H
Lange Leemstraat 95, 2018, Antwerpen, Belgium
TEL: +323/238 47 82
Dorm:12euro
Private:30euro
(Breakfast +2.5euro)

アントワープにて

–ベルギー、アントワープ

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 アントワープは近年ファッションの先端を走っていて、王立芸術学院という学校から優れたデザイナーが数多く輩出されており、中でも「アントワープ・シックス」と呼ばれる別格なデザイナーたちが存在する。…なんだか戦隊ものヒーローみたいな響きだ。悪の組織と戦ってるのかな。
 聖母大聖堂へ、ルーベンスの「キリスト昇架/降架」を見に。「パトラッシュ僕もう疲れたよ…」はここか。しかしさすがに横になれるような雰囲気じゃないな。
 フランダースの犬ははっきり言って日本人だけに有名だということだが、それを裏付けるようにここ聖母大聖堂にもしっかり日本語の解説冊子が置いてあった。日本のアニメで取り上げられるまであまり知られていなかったらしいけど、今ではトラムで30分ほどの町ホーボーケンにネロとパトラッシュの銅像が建っている…さて見に行ってみると誰も注意を払っていないような所に小さな像がぽつんと立っているだけ。まあ、こんなものなんだろうか?
 まあそれはそれとして、アントワープの街は骨董品の店やいい感じのカフェがちょっと歩くだけでもいくつも見つかるし、それ以前に街の持つ空気がなんだか良い感じにゆるい。気づくと予定より泊数を増やしてしまっていた。

黒づくめの人々

–ベルギー、アントワープ

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 ブリュッセルの次は、オランダのデンハーグに移動しようと思っていた。地図上ではとても小さいベルギーを抜けてすぐ近くだ。しかし地図を眺めながらその手前の地名が目に入る。アントワープ。なにか聞き覚えがある響きの地名だ…
 調べてみるとアントワープは、かの「フランダースの犬」の舞台であるらしい。だから聞いたことがある気がしたのか。ということはあの最終回の、ルーベンスの絵がある教会があるということか。それはちょっと見てみたい!
 ブリュッセルからアントワープまで、列車に乗って約40分ほどで到着。
 少し日本語を話せるツーリストインフォのおじさんに「ブーメラン」という宿を紹介してもらい歩き出すと、道行く人々がなんだか見慣れない服装だ。ぞろ長い黒外套に黒スーツ、黒い靴。帽子もやはり黒いシルクハット。長く伸ばしたモミアゲをカールしている。アントワープの人は変わった格好をするんだなー…いや、この風貌はたしかユダヤ教徒のものじゃないか。とすると、どうやらここはユダヤ人街のようだ。
 イスラエルには行っていないのでユダヤ教徒を目にするのは初めてだ。黒ずくめの服が好きな僕はそのセンスは嫌いじゃなかったけど、あのモミアゲだけは理解不能だ。

マグリット博物館

–ベルギー、ブリュッセル

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 マグリット博物館は、ルネ・マグリットが暮らしていた家──普通の住宅街の普通の家で、看板が出ていなければきっと分からない。(実は休館日である前日にも来て、この通りを2往復して結局見つけられなかった。)
 マグリットの絵は、その多くを身近なものをモデルにして描いていたらしく、表の町並みや街灯、暖炉や窓枠、階段、果ては庭にある鳥かごまでが、作品の中のものと同じであるのはとても面白い。
 おみやげに買った、青空が帽子とマントをかぶっているような絵(分かりづらいな)のポストカードを眺めながらワッフルを食べる。
 ベルギーもやはりずいぶんと寒い。

1万キロのすれ違い

–ベルギー、ブリュッセル

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 ベルギーは…首都ブリュッセルは、EUの本部があるところだ。と、その程度しか知らなかったりする。
 いや、もうひとつだけ。マグリットの生まれた国だ。美術のことは正直よく知らない僕にも好きな画家が数人いる。M.C.エッシャーとルネ・マグリットだ。どちらもなんだか「人を食ったような絵を描いている」というイメージだ。そのマグリットの絵がここベルギーの王立美術館にあるらしい。それは見に行かなければと大雨の中、王立美術館へ。
 …と、アレ、無い。
 マグリットの絵なんか全然無い!なんで!?いや待て、待てよ。あった。2点だけあった。しかしたった2点だけなんて!おや、もう一点あるぞ。これは知っている、有名な「光の帝国」という絵だ。しかし正確には「あった。」そこには小さなプレートと以下の説明が。「日本での展示のために現在貸出中です」
 え─────!
 ここまで来たのに、絵は日本かよ。
 そもそもこれを含めても3点しかないというのが解せない。本当なら50点以上はある筈なのに!全部日本に行ってしまっているのか?それとも来年地下1階にオープンするという「マグリット館」の準備かなんかでどこかに移動されているのだろうか?
 どちらにしても、この強烈な肩透かしに一気に力が抜けてしまった。ブリュッセルにも嫌われるのか…
 いや、と思い直す。たしか郊外に、本人の家をそのまま利用した「マグリット博物館」があるはずだ。そっちに行ってみよう。
 写真は世界三大がっかりとして有名な小便小僧。うん、小さかった。

ルーブルに斃れる

–パリ、フランス

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 ヨーロッパにやって来るまで、美術館や博物館、遺跡ですら、隅々まで歩き回らないと気がすまなかった。一点すら見逃すのが惜しいという小市民的思考の産物なのだが、ヨーロッパに入るとそうはいかなくなってきた。なぜなら広すぎるのだ。美術館が。
 そして、ここパリにあるルーブル美術館は世界最大級の規模を誇っている。目玉はモナリザ、ミロのヴィーナス、サモトラケのニケ像など。
 おいしいものはなんとなく後回しな僕はだだっ広いルーブルの中をエジプトのミイラだとか、ハムラビ法典、変なポーズの像を求めてうろつき回り、それでもなんとかエリアを全て見て回ろうかとローラー作戦を開始したのだけど、
 ムリ。正直疲れた。
 2日入場券とか売ってある理由を理解した。
 疲れ切った末に見た名画たち。
 モナリザは「思ったより小さい絵だな」としか感じず、ミロのヴィーナス、ニケ像に至っては「おお……これか…」。
 ぜえぜえ。
 教訓。名画を見る時には体調を万全にしておくこと。