カテゴリーアーカイブ ユーラシア(2006)

首都、水辺の夕食

–ラオス、ビエンチャン

 ラオスの首都ビエンチャンはそれまでに比べれば喧騒に包まれているように感じた。ただしあくまで「比較的」で、一国の首都としてはやはり小さな印象を受ける。
 バスに揺られながら受けた埃や汗を、薬草サウナで洗い流す。サウナは本当に日本と変わらず、しばらく汗を流して、水をかぶってを繰り返す。まるで風呂に入ったような気分になれる。欧州人らしきおじいさんが、普通の人の3倍くらいの時間サウナに籠っていて、大丈夫かな…?と思いながら牛乳を飲んだ。こりゃまさに銭湯だ。
 すっかり温まったところで、川沿いの屋台でビールを飲んでいると、バンビエンから一緒のバスでやってきた日本人の男の子がやってきて、一緒に飲む。川面に映る町の明かりがまるで広島を思わせて、すぐに気持ちよくなってしまった。

金色の稜線

–ラオス、バンビエン

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 ルアンパバーンで出会った人にお薦めしてもらった、バンガロー造りのゲストハウスに落ち着いた。しばらく町を歩いてネットなどをしていると、どうやらエアコンにあてられたらしくめまいがして来た。前日にルアンパバーンで明け方の冷え込みにやられて風邪をひいてしまい、一日伏せっていたんだけど、治ったと思って無理に移動したのが災いしたようだ。
 どちらにしても、さして他にすることもない町なので、部屋備え付けのハンモックに揺られていると、山の稜線が金色に輝きだした。この景色だけでも、この宿に泊まったのは大正解だと思う。とかリンゴを齧りながら考えているといつのまにか眠っていたようだ。蚊にやられまくっていた。

朝の儀礼

–ラオス、ルアンパバーン

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 ルアンパバーンは町全体が世界遺産登録されている町で、家々は欧州風やベトナム風、ラオス風のものが立ち並ぶ美しい町だ。上座仏教を信仰する寺院からは毎朝、僧たちが縦列をなして托鉢をうける。眠い目をこすって向かうと、人々はすでにお布施をそれぞれ用意して座している。
 神聖な儀礼を邪魔しないように注意してカメラのシャッターを切る。

青と緑と茶色

–ラオス、ルアンパバーン

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 パクベンからまたも1日かけてたどりついた古都ルアンパバーン。
 疲れた体を休めた翌日、クアンシーという滝へ向かう。道中30分ほど、視界にあるのは青と緑と茶色のみ。日本もずっと昔はこんな風景が延々続いていたんだろうな…
 滝は結構な高さで、それをてっぺんまで登ろうということに。「これ道?」というような場所を切り抜け、たどり着いたそこには誰も手をつけてないような瑞々しい森が広がっていた。
 滝の逆側には、ずっと上りやすそうな登山道がついていた。やっぱり道じゃなかったらしい。

メコン下り

–ラオス、パクベン

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 ようやく乗れたスローボートでメコン川を下る。スローボートと言えば聞こえは良いかもしれないが、実情はぎゅうぎゅう詰めでかなり体勢が苦しいほど人が乗っている。これに2日間。しだいに尻が痛くなってくるのは、雄大な景色で紛らわせるしかない。
 一日ではルアンパバーンまでたどり着けないため、この日は中間地点の村、パクベンと言うところに泊まることに。ゲストハウスが立ち並ぶだけの小さな村の真ん中あたりでは発電機がドコドコ回っている。とりあえず宿を取り、さてどうしようか?と悩んでいると、いきなり村中の灯りが消えた。どうやら夜9~10時以降は発電機が止まるようだ。やれやれ。
 ともあれ、疲れていたので早々に寝る。

国境を越える

–ラオス、フエサイ

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 タイのチェンコーンで一泊した翌日、ラオスへ入国する。イミグレーションも簡単に通過し、渡し舟乗り場へ。メコン川を渡ればラオスだ。
 ラオス側のイミグレーションで若干時間がかかる。なんだか人物リストを照会しているようだ。もしかして危険人物リストか…?と、後ろめたくも無いのにビクついていると、しばらく後に普通に通れた。同じルートをたどって来た日本人ツーリストに聞くと、全然そんなことなかったらしい。僕はそんなに凶悪面してるのだろうか?
 「ラオ人はたまに思い出したように仕事しますからね、それにぶつかったんじゃないですか」とその人は笑っていたけど、もしそれが本当なら逆の意味で怖い。
 ラオス入りしたはいいけど、ルアンパバーン行きのスローボートはもう出てしまっていた。仕方が無いので宿を取り、自転車を借りてメコン沿いに下ってみる。上手く降りられそうな川原があったので、座ってメコンをぼけっと眺めていると、右手の方で少年が一人、投網をはじめた。

チェンマイ最終日

–タイ、チェンマイ

 アユタヤから一緒のバスで来て、チェンマイでも一緒に過ごしてくれたスミヤ君。彼は毎年この時期、チェンマイにタイマッサージの勉強に来ている。彼の行きつけのバーで知り合ったという、トゥクトゥクドライバーのボーイと、その彼女であるノンさんと4人でチェンマイの北60kmにある、ボーイの実家へ行くことになった。
 街を出るとトゥクトゥクは一台も走ってなくて、珍しそうな視線を感じる。昨日で終わったはずのソンクラーンも郊外ではまだ続いているらしく、そこへ珍しいトゥクトゥクが来るとなると、皆こぞって水をぶっ掛けてくれる。おまけにボーイもわざわざ速度を緩めるし…着くまでに再び僕らはずぶぬれになった。
 ボーイの地元では皆彼のことを知っていて、通りかかると声をかけてくれる。ボーイ、まるでヒーローみたいじゃないか。実家に立ち寄ったあと、近くの山中にある滝へ。約50メートルの滝はとても綺麗で、そんな景色を見ながらビールを飲む。言葉にならないくらい美味い。
 チェンマイに戻っていったん別れた後、ゲストハウスのダイスケさんも交え、再びボーイたちと合流して飲みに行くことに。
 タイの飲み屋(ディスコもかな)は基本的に生演奏で、一曲ごとにボーカルが変わることが多いようだ。客も恐ろしくノリがいい。あちこちで立って踊りながら、曲が始まると大喝采。楽しすぎる。スミヤ君はしきりにアイコンタクトを送ってきていた隣の席の女の子と、いつのまにか一緒に踊っている。やるなあ。ノンさんはなんだか難しい顔をしている。
 僕が明日チェンコーンへ向けて出発することを話すと、ボーイもノンさんもとても残念がってくれた。先のスミヤ君と踊っていた女の子のことも含めて、「タイには良い人も悪い人もいる。さっきの子は良くない子だよ。私たちは、スミヤやジュン達が好きだから、とても心配に思う。本当に気をつけて」と涙してくれた。僕はスミヤ君や、彼らに出会えたことを心から嬉しく思うと同時に、友達になれたことを誇りに思う。
 タイのヒットナンバーを最後に、閉店時間がやってきた。
 ボーイに曲名を教えてもらう。明日、CDショップで探してみよう。
 翌日、チェンコーン行きのバスに乗り込む。ボーイたちが見送りに来るよと言ってくれたけど、トゥクトゥクのお客が多いのか結局会えずじまいだった。
 バスに揺られながら、チェンマイに本当に来てよかった、と、ひどく感傷的な気分になった。あまりにも日々が楽しかったので、これから一人で旅行を続けられるか不安になったのだ。
 スミヤ君、ボーイ、ノンさん、ゲストハウスで出会ったダイチ君やケンジ君やダイスケさん、ミズエさんとモリスさんのインターナショナルカップル、カンボジアに学校をつくったというクリスティン、いつも笑顔で話しかけてくれたネットカフェの女の子。愛すべき人たち、中には二度と会わない人もいるだろう。胸が締め付けられる。一期一会と言う言葉が心に重く響く。日本を出発して、初めて辛いと思った。
 北方のバラと呼ばれるチェンマイ、いつの日か再び来て、ドイステープから夜景を眺めたい。

さよなら僕の愛した眼鏡達

–タイ、チェンマイ

 ソンクラーン中に眼鏡が壊れた。泥にまみれ、フレームはまっぷたつ、レンズも砕けた。この上なく壊れた。100点満点だ。水をかぶるたび外して顔を拭うのが面倒で、ポケットに入れていたのが間違いだった。気がつくと無い。引き返して探していると、無残な姿で見つかった。

 度入りのサングラスは持っているけど、若干色が入っているのでやっぱり普通のメガネも欲しい。チェンマイの眼鏡屋にて新しい眼鏡を購入した。日本と同じ検査をして(野原の家や気球の絵を覗くアレ)、1時間で完成。お値段2000B。安いじゃないか。よしよし、今度は絶対外さないぞ、外さなければ失くさない。
 翌日、気合を入れてソンクラーン戦場に臨んだ僕は、地元の子たちの誘いによって果敢に濠に突入。濠に潜って上がってみると、彼らの様子が変だ。身振りから察するに、メガネはどうした、と言っているようだ。顔に手をやる。無い。
 濠の水は濁っていてとても見えなかった。でもみんな足で探してくれる。しかし当然ながら結局見つからず、哀れ2代目メガネはわずか1日の命だった。

 これにはさすがに凹んでいると、みんながとても心配してくれた。マイペンライ(気にするな)と言うも、いくらなんでも我ながらアホすぎる。2度あることは3度ある、にならないように、最後のサングラスだけは失わないよう気をつけようと思う。

 新しく買ったやつ結構気に入ってたんだけどな。「調子に乗りすぎるな」という授業料と思うしかないか…

ソンクラーン

–タイ、チェンマイ

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誰も彼も、頭からつま先まで、ずぶ濡れにならない人はいない。

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トラックはこの日戦車になる。バケツが大砲だ。

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供給源は旧市街を囲む濠の水。軽く5杯分は飲んだと思う。でもピンピンしてます。

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赤ちゃんからお年寄りまで全員参加の3日間、一番楽しんでいるのはやはり若い人だ。どうやら水を掛けることは、相手の幸せを祈ると同時に意中の人の気を引くという意味もあるとのこと。男の子は女の子に、女の子は男の子に。

どんなにひどい掛けられ方をしても、濠に突き落とされても、大半は笑って済ませるのが暗黙の了解だ。でもやはり中にはブチ切れてしまう人もいて、あちこちでムエタイの試合が発生していた。また、交通事故や溺死など、毎年ほぼ必ず死者も出る。それでも皆この祭りが大好きな気持ちが僕もわかる。笑いすぎて腹の痛い3日間だった。

チェンマイに迷う

–タイ、チェンマイ

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 レンタルしたバイクで山の上の寺院を目指して走っていると、何だか等間隔でアスファルトが盛り上がっていてスピードが出せないつくりの道に入り込んでいた。変な道だなと思って地図を広げていると、一羽の孔雀が道を横切っていく。孔雀?この辺には普通に孔雀がいるのか!と感動していると、どうやら動物園の中に迷い込んでいたようだ。迷い込めちゃマズいんじゃないのか…?そ知らぬ顔して出口から脱出。
 山の上の寺院、ワット・プラタット・ドイステープからチェンマイ市街を眺める。暗くなってくるにつれ、ぽつぽつ明かりが、次第に街の交通網を浮かび上がらせていく。感傷的な気分に。おそろしく綺麗だけど、全く、夜景は一人で見るものじゃない。
 バイクで走っていると、何度か水をぶっ掛けられた。ソンクラーン(水掛祭)が始まる。