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最後の晩餐

–イタリア、ミラノ

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 ミラノで取った宿は中央駅から地下鉄で3駅先にあるユースホステルで、辺りには中国人経営のお店が多い。そういう場所なんだろう。おかげで親近感の湧く、ファー・イーストな顔の人々だらけだ。そんなわけで僕もここでは全く目立つことなどなく、ネットカフェでもID代わりにパスポートを提示してはじめて「ああ、日本人なんだ」と言われるしまつ。
 ミラノ2日目はサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会へ。この教会には美術館が併設されている。しかし展示数はたったの2つ。そのうちのひとつがかの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチ作「最後の晩餐」だ。
 うわさでは完全予約制、当日行っていきなり入ることは出来ないと聞いていたけど、何の問題もなくチケット購入可能。しかし一度に館内に入る人数は決まっているらしく、完全入れ替え制のようだ。今中にいる人たちが出て行くまで扉が開くことはない。それにしても入場扉前の狭い待機スペースは既に人で溢れていてげんなりしてしまう。人が少なくなるのを待つか、と僕はタバコを吸いに出た。
 しばらくするとすっかり人はいなくなっており、悠々と待っていざ入ろうとするとモギリが僕を呼び止めた。
 「あなたのチケットは入場期限が過ぎてます」
 え。よく見ると入場チケットには時刻の刻印がされている。チケット購入した時間だとばかり思っていたがそれは間違いで、なんと入場可能時刻であるらしい。すなわち、その刻印された時間にしか入場できないのだ。なんだその厳格さは…
 そんな説明受けてないけどなあ、と何とか粘ってみると、次に開いたときに入れてもらえた。助かった。ついでに言えばその次の回は僕以外全員が日本人のツアー団体で、壁画についてのガイドさんの講釈がタダで聞けてラッキーだった。曰く、裏切りのユダだけ顔に光が当たらないように描かれているだとか、キリストの口は開いていただとか…これは、遅れて良かった。
 壁画が2枚しかない美術館。
 だけど逆に、このほうが集中して楽しめて良いかも知れない。
 駅に向かう途中、城塞の中の公園でゆっくりする。
 イタリアもこれで終わりだ。フランスはどんな国だろうか…

ミラノ、ドゥオモ

–イタリア、ミラノ

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 さて翌日。今度はしっかり計画通りに見て周り、大満足してミラノへ。
 ヴェネツィアは切符を破棄してしまったせいか行く気が失せてしまって、結局取りやめた。思えばイタリアでは、最初に行こうと決めていた街には行かずじまい、一旦諦めた街やよく知らない街にばかり立ち寄っている気がする。
 僕は間違いなく天邪鬼な性格だし、突然目的地を変更するのは気持ちいい。まるでスケッチブックの新しいページを開くような気分だ。
 ミラノのドゥオモは期待に反して広場側が全面修復中で、何の風情もないシートが被せられていたが、反対側の壁面や入り口の扉には素晴らしい彫刻を見ることが出来たし、もちろん内部の素晴らしさはなんら色褪せていなかった。美しいステンドグラスの数々、全部で55枚ものステンドグラスが聖堂内を照らし出している。特に気に入った一枚は、後陣にある巨大なステンドグラスではなく、身廊の左手に並ぶ内の一枚だった。
 上半分には舞い降りる天使達が描かれている。最上部にはラッパを吹き鳴らす天使、白い馬に跨った天使の下には槍を携えた天使達が。そして下半分には様々な不吉な姿をした生き物達が描かれている。悪魔だ。黙示録かな。右下でその様子を見ながらおののいている人間は誰だろう?
 ステンドグラス写真、ボケててスイマセン。

忘れじのひと

–イタリア、フィレンツェ

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 ゲストハウス・ペッシにて、フィレンツェ観光案内のページを繰っていると、不意にものすごく見慣れた顔が目に飛び込んできた。
 それは旅行に出発する前の日本で、職場で、必ず一日一回は眺めていた女性。
 ボッティチェルリのヴィーナス
 Adobe Illustratorを起動すると現れる彼女だ(CSになってからは顔を見せなくなってしまったが)。ああ、懐かしい(?)。なんかイヤなノスタルジーではあるが。
 この絵はここフィレンツェのウフィツィ美術館にあるようだ。これは行かなきゃなるまい。さくっと見て、アカデミア博物館でミケランジェロを見て、ドゥオモなんかに寄りつつ、夕方の列車でヴェネツィアに行く。そんな計画を立てた。もう切符は買ってある。
 しかしちょっとナメ過ぎていたらしく、簡単に狂ってしまう我が計画。
 ここはやはり超有名観光地で、今はあくまでハイシーズンだということだ。ウフィツィ美術館に入るまでの行列は3時間待ち。ようやく出たころにはアカデミア博物館は既に閉まっており、ステンドグラスが気になっていた駅前のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会も目の前で閉館。うーん、これでフィレンツェを去るのか??でも既にチケットは買ってしまった。30分後に発車だ。
 だが。
 結局逡巡のすえ、ヴェネツィア行きのチケットは破棄。もう一泊して明日リベンジだ。フィレンツェ、このまま嫌われっぱなしじゃ終われない。
 宿に戻ってアンジェロに「ごめんもう一泊させて」と頼むとびっくりしていた。申し訳ない。

知っているのは名前だけ

–イタリア、フィレンツェ

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 ローマを出てどこへ行こうか。
 南に下って、また北に戻る気にはなれないからナポリは除外。うわさに聞く青の洞窟はいつの日か、また。さしあたって北方面、最寄の都市はフィレンツェだ。誰かに強く薦められていた街だ。ミケランジェロの彫刻がある街だったか?
 他に何があるのかよく知らないけど、街の名前には結構聞き覚えがあったので、多分有名観光地だろう。何を見るかは行って考えればいいか。
 フィレンツェに着いたのはもう夜で、ツーリストインフォも閉まっていた。地図を貰って、ついでに安い宿を教えてもらおうと思っていたのだけど、これじゃ右も左もわからない。困って歩き出すと、見知らぬおじいちゃんが声を掛けてきた。
 「宿を探してるのか?」
 「あるの?」
 どうやら客引きだったようだ。でも観光地だし高いんだろうなー。と思っていると、16ユーロ。ぜんぜんオッケー、渡りに船だ。おじいちゃんの名前はアンジェロと言うそうだ。
 「フィレンツェにはどれくらいいるつもりだ?」
 「うーん、明日だけ」
 「そりゃ短すぎる!」
 確かにここの所、急ぎすぎている気はしなくもない。
 でもなんだかヨーロッパは落ち着く気になれないのだ。いや、落ち着いたが最後動き出せそうに無い気がする。
 可能ならば毎日移動したい。宿探しは面倒だけど…
 ともあれ、フィレンツェで運よくめぐり合ったゲストハウスは良い感じに落ち着ける雰囲気で、非常に気に入った。

 Guesthouse Pesce
 Dorm:16Euro
 Tel:348-256-83-70
 Via del Campuccio n゜31, Firenze, Italy

コロッセオと太鼓

–イタリア、ローマ

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 コロッセオに向かって歩いていると、いろいろな人を目にする。絵を描いているおじいさん、石像になりきっている大道芸人、そしてその先に、タイコを抱えた和風な服装の人たちを発見。さっそくコンタクトすると、やはり日本人だった。
 イトウさんとミカドさんというお二人は、一月ほどかけてイタリア各地で太鼓を打ち鳴らす旅の途中であるらしい。衣装はなんと手作り!桶太鼓というらしい(違ったらごめんなさい)そのタイコは意外に大きな音が鳴り、イタリア人から喝采を受けていた。が、ちょっと音が大きすぎたらしく、ポリスに警告を受けること2回。なかなか大っぴらにタイコを鳴らせるところは無いようだ。
 「こうなったらコロッセオの真ん中で伝説に残るライブを!」
 「いや、それはマジで捕まる」
 そりゃそうか。
【動画】桶太鼓ライブスタート!(2.2MB)
※サウンドが流れます。ご注意ください。

懐かしいな、それ

–イタリア、ローマ

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 ローマの町を歩く。一定の間隔をおいて、露店が出ている。偽ブランドのカバンとか、変なチョロQみたいなおもちゃとか、三脚とか。
 三脚?そういえば三脚を買おうと思っていたんだった。なぜかというとオーロラ撮影になくてはならないものだからだ。使うのはしばらく先ではあるが、この先どんどん物価は上がっていくだろうし、この辺りで買っておいたほうが良いかもしれない。値段を尋ねると「30ユーロ」。
 30ユーロか。物は試しと、「10ユーロ」と言ってみる。それじゃ売れないという店主。20ユーロが限度だと。まあ、また今度にするか…店を離れようとすると、店主が言った。
 「How Much?」
 ん?なんだこの懐かしい感覚は。この受け答え、すごい聞きなれたやりとりだ。
 「どこから来たの?」
 「バングラデシュ」
 やっぱりか。どうりで懐かしいはずだ。インドで一日最低5回くらいは耳にしていた「How Much?」。僕は3ヶ月前バングラに行ったよ(トランジットだけど)、とか、あっちのほうから延々来たんだよ、とかしばらく話した。
 最終的に15ユーロで三脚を購入。

偽りの心がある者は

–イタリア、ローマ

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 映画「ローマの休日」で有名な「真実の口」。
 何度も道を尋ねながらサンタ・マリア・イン・コスメディン教会に辿り着くと、えらく小ぢんまりとした場所であるにもかかわらず既に長蛇の列が。さすがに大人気スポットだ。
 しかし狭い通路にきっちり並んで一組ずつ写真を撮る様は、まるで工場の流れ作業のようだ。とても混じる気にはなれなかったので(一人だし)柵の外側から撮って退散。
 心も偽りだらけだしな。
 わざわざ手を差し込んでみるまでもなく。
 さて、この真実の口、もともとは下水溝のマンホールの上蓋だったらしいが、どういう経緯でここに飾られるようなったんだろうか?因みにこのオッサンはギリシア神話、海神ポセイドンの息子トリトン。嘘が嫌い…かどうかは知らない。

「う」「お」

–イタリア、ローマ

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 僕は何をトチ狂ってローマを飛ばそうとしていたのだろうか。危ない。これを見ずに進んでしまうところだったのか!信じられない!
 バチカン市国、サン・ピエトロ大聖堂の前広場にて僕が発することの出来た音は2種類だった。すなわち「う」「お」。
 そのあとで笑いがやってきた。スゲエ、凄すぎる、壮大で美麗で精密すぎるそれはたぶん僕の許容量以上だったのだろう。笑いが止まらない。巨大な広場を囲むように並ぶ列柱一本一本の上にいちいち緻密な石像が並んでいる。すべてポーズは違う。いったい何体あるんだ…
 聖堂からは鐘が鳴り響く。笑うしかない。ここまで無駄に豪華だと。
【動画】広場をぐるっと撮ってみた(1.3MB)
※サウンドが流れます。ご注意ください。

ローマを見てから死ね

–イタリア、アンコナ

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 港町アンコナをうろうろした末に辿り着いた駅のチケット売り場に並びながら、買ったばかりの1/3000000ヨーロッパ全図を広げてヴェネツィア行きのチケットはいくらだろう、とか考えていた。行くことを諦めた「Roma」という文字と大体の距離をぼんやりと眺めていると、不意に「ローマを見てから死ね」という言葉が浮かんだ。
 しばらく誰の言葉だっけ、と考えて、昔買ったCDのタイトルだったことを思い出した。ローマを見てから死ね。ローマを見てから死ね。ローマを見ずに死んでしまっていいのか?確かにそうだ、ちょっと遠いからといっても、これまではどうだった?隣町くらいの距離じゃないか。確かにそうだ、ローマを見ずに死ぬわけにはいかない。
 行き先→ローマ。多分これは神の啓示。