Book of Ti’ana 第6章─染み

第六章 | 染み

ゲーン四歳の誕生日。
ドニのアトラスの家では厳粛な儀式が行われていた。今日までゲーンは子供として、他の子同様に自由に遊んできたが、今日この時からギルドマンになるための歩みを始めることになる。
アナは感慨深く息子の姿を見つめた。ギルド関係者に囲まれて少し怯えている様子だ。今日のために髪は切りそろえられ、ギルド服に身を包んでいる。それは両側に立つ父アトラスと祖父カーリスの服のレプリカだった。
そして三人の正面、架脚式テーブルの向こう側には、製本ギルドのグランドマスター・イテールが立っていた。ゲーンは彼のギルドの見習いとなることが既に決まっており、二週間後には製本ギルドホールにて入会式が行われる予定となっていた。
二日前、ギルドに入ることをゲーンがひどく恐れていることを知っていたアナは、本当に今ギルドに入る必要があるのかアトラスに尋ねたが、アトラスはきっぱりと答えた。
「確かに彼は死ぬほど家を恋しがって泣くだろう。でもこれがドニのやり方だ。そして彼がドニ人として自分の人生をこの世界で歩いていくためには、ギルドの道に従わなければならないんだ」
そういう訳で、ここのところアナはゲーンと距離を置くようにしていた。それはゲーンにとっても、アナにとってもつらいことであったが、アトラスはきっと正しい。長い目で見ればこれはゲーンにとって必要なことなのだ…疑問がまったくないわけではないが。
グランドマスターに呼ばれて進み出たゲーンは静かに祈り、アナから教わったギルドの誓いの言葉をたどたどしく諳んじた。ゆっくり、つまずきつつ暗唱を終えると、マスター・イテールは慈愛に満ちた顔で微笑み、朗々とした声で受け入れの言葉を述べた。

The Book of Ti’ana © 1996 Cyan, Inc.