–スウェーデン、アビスコ
僕の泊まっているユースにはシャワーとは別にサウナがある。庭に立つ小屋の中にあって、宿のおっちゃんが毎日午後8時ぐらいになると炊き出して呼びにくる。サウナ自体は日本で入ったことのあるものとさして変わりはないが、あったまった後はそのまま外に出てクールダウンする。外気温は大体5~6℃。全裸で出るため非常に寒いはずだけど、サウナの後だととても気持ちが良い。真冬でもやっぱり外でクールダウンするらしい。心臓止まるんじゃないだろうか。
あと一つだけ大きな違いがある。混浴だ。
老若男女かまわず裸のつきあい。そして外に出てクールダウン。僕が入った日はかわいいドイツ人の女の子2人が入っていた。心の中で思った、神様ありがとう。
翌日、イタリア人のルーカとヴァレンチノという2人組と一緒にトレッキングに行くことに。
ここアビスコは有名なトレッキングルート、“クングスレーデン”の出発地でもあり、宿に来る旅行者も大抵トレッカーの格好をしている。夏は過ぎたとはいえまだ雪も少なく、歩きに来る人も多いんだろう。
とはいえ僕はトレッキング装備など皆無にしてクングスレーデンに挑むことなど出来るはずもなく(なにしろ徒歩で全長1000キロ)、せいぜい3キロ先の湖を見に行こう、ということなのだった。
歩きながらルーカが言う。
「もうサウナには入ったか?」
「入ったよ」
「誰か一緒に入ったか?」
「うん、ドイツ人の女の子2人」
「おお、ラッキーだったな…宿のおっさんも入ってきたか?」
「うん」
「やっぱりか」
「?」
「いや、先日俺たちとあと宿泊客の男の3人でサウナに入ったんだけど…おっさんは『私は普段は入らないんだ』とか言って入ってこなかったんだ」
「僕のときは『私は健康のために毎日入る』とか言ってたよ」
「『健康のため』だとー!?」
その後ルーカは「メルダ!」※と連呼していた。まあ、おっさんも男なのだ。
※メルダ…イタリア語でshit
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