アンコナ?バーリ?

アンコナ?バーリ?

–ギリシャ、パトラ

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 アテネに戻った僕は、4月に購入して以来僕の旅行を支えてくれていたメイド・イン・チェンマイのサンダルと別れを告げた。製作者のガタイのようにとてもしっかりした造りだったこいつも、既に踵部分はペラペラに薄くなり、右足の親指部分はちぎれてしまっている。「できれば日本まで持って帰りたいけど、無駄な荷物を持つ余裕はないんだ」。戦友はアテネの名も無いゴミ箱へと姿を消した。さらば。
 さてその後、ほとんどアテネを素通りしてペロポネソス半島の西端、パトラという港町へ向かった。ここからイタリア行きのフェリーが出ているという。
 さて切符を購入する。受付の女性が言った。
 「アンコナ行き?バーリ行き?」
 「?」
 何。イタリア側には港が2つあるのか。ただなんとなく、イタリアの南端に着くもんだろうと思っていた僕がまごついていると、アンコナ行きのチケットが渡された。アンコナが一体どのあたりにあるのかすら知らないけど、「まあいいか」…いつものように済ませてしまった。これは失敗だった。
 船内に掲げられているイタリア地図で確かめると…やけに北だな…アンコナはローマよりも北、どちらかというとヴェネツィア寄りの港だったのだ。
 今更ながら確認を怠ったのを後悔した。これではナポリに行けそうにない。青の洞窟やポンペイ遺跡で有名なナポリは行きたい街のひとつだったが、行くにはちょっと遠い。それどころか正直、ローマも地味に遠い。
 …この際ナポリもローマもあきらめて、ヴェネツィア、ミラノ程度でイタリアを抜けてしまおうか?そしてフランスに入る。まあ仕方ないか、そうしよう。アンコナに船が入港するころ、僕はそう決めた。