–エジプト、バハレイヤ
黒砂漠を抜けると、次第に緑が現れ始めた。この辺りには鉱泉の湧く村があるのだ。泉と言っても、黄色い砂丘の中、椰子の木に囲まれた湖のようなフォトジェニックな感じではなく、石造りのプールのようだ。ポンプでくみ上げられた水は白濁していて、冷たい。村の住民たちはみんな気持ちよさそうに遊んでいる。気が付くと僕らのジープのドライバー、マンドゥイもいつの間にやら服を脱いで浸かっている。「どうした。入らないのか?」そりゃ入るとも。トランクス一丁で飛び込む。クソ暑い砂漠の真中、とても気持がいい。
いつの間にかパイプからの水は止まっていて、水もなんだか濁ってきたな…と思っていると、ポンプのエンジンが始動する音がして、パイプを水が伝わってくる音が響き始めた。高まる期待感。そして一気に冷水が噴き出すと、再び子供たちがそれぞれに叫びながら飛び込み始めた。
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