ルーズモーション

ルーズモーション

–インド、レー

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 目がさめたら横になっていた。なにがどうやらさっぱりはっきりしない気分で見回すと、すぐ右手に同行者が布団にくるまっているのが見える。どうやら何処かの宿に運び込まれたらしい。宿、といっても部屋ははっきり言ってただの土間である。窓から見える空は曇っていて、昼間のようだけど一体僕はどれくらい寝ていたのかも知れない。相変わらず気分は最悪で、何度も目覚めては眠りに落ちるのを繰り返すと、何度目かには夜になっていた。天井にあると思っていた明かりはどうやらただの「穴」だったらしく、その穴から真っ暗な空が覗いている。僕は目覚めた時点で「ああ、レーに着いたのか」と思っていたのだが実はその宿はレーの80km程手前の村落で、休憩のとき僕が全く目を覚まさなかったために「もうここでおまえら泊まってけ」ということになったらしい。なにもこんな中途半端なところで降ろさなくても…レーまで行けば病院だってある。
 のどが渇いたので水を飲み、そうするうちにトイレに行きたくなってきた。凡そまともに歩けるとも思えなかったが仕方なく起き上がると同時にすっ転び、そして生まれたての小鹿みたいな足取りでトイレを探すけど、はっきり言ってその部屋を出たのすら初めてだったので全く造りがわからない。適当にドアをへばりつくように開けると「穴」があった。どうやらトイレのようだけど、簡単に言うと土の床の2階建ての建物の、2階の床部分に50cm四方ほどの穴が掘られている。それだけのトイレだ。穴からは1階部分というか、所謂トイレの底が覗いている。覗き込むと落っこちそうなのでやめておいた。それにしてもこのトイレは今まで見た中で最強だ。
 結局その宿に何日間居たのか未だによくわからない。
 おそらく1日か2日ほどだと思うけど、なんだかよく判断できないうちに僕はローカルバスに乗って、ガタガタ震えながらレーにたどり着いた。到着と同時に僕は入院した。